地域活性化のためのコミュニティーとコワーキングスペースの射程「くりやまものづくりDIY工房」【道新】

今朝は私の関心をひく記事がなかったため、昨日の記事を紹介します。

「ものづくりDIY工房 運営に全力(北海道新聞、2019/10/12 岩見沢・南空知版)」

これに関連して、本日、こんなツイートをしました。

栗山町 の #地域活性化 戦略に関する昨日の #道新
20年ほど前、サーバーがらみの仕事で通い詰めた思い出の町。
なかなか面白いなと思う一方で、
コワーキングスペースが
この手のコミュニティーづくりに有効な気がする
と、ふと思う
もちっと整理してブログに書きます

というわけで、整理したところを以下で書いてみます。

地域活性化のためのコミュニティーとコワーキングスペースの射程「くりやまものづくりDIY工房」

栗山町といえば、20年ほど前に、しばらく通いつめた私にとって懐かしい思い出の町。
サーバシステム構築案件やらその他諸々、仕事をいただた。農家さんにもよくしていただき収穫期になるとメロンやらゆり根やらいろんな野菜を大量にいただいた。

その栗山町で、面白い事業が着々と進んでいるというのが、今日取り上げる記事。

実際に関係者に話を聞いたわけではなく、昨日の道新の記事とDIY工房のサイトから読み取れる範囲の情報をもとに書いている。だから「いやいやそこちゃんとやってるから」と関係者にお叱りをうけることもあるかも、ということをあらかじめ断っておきたい。

もし関係者の方が、これを読んで、「それ違うから」というご指摘等あれば、連絡をいただければ幸いです。

「くりやまものづくりDIY工房」という事業

地域の課題解決や人材育成、ビジネス活用、いってみれば、地域活性化をねらい、
地方創成施策の一環として、国の交付金を受け作った(作ろうとしている)のが、今日取り上げるこの「くりやまものづくりDIY工房」

設備としては、レーザーカッターやUVプリンタ常設、支援員が懇切丁寧に使い方を教えてくれるので安心。個人的には、3Dプリンタも欲しいところ。

だけど、この手の施設がしっかり機能するかどうかは、設備のみならず、そこから生まれるコミュニティーにかかっているといっても過言ではない。

「利用者同士によるコミュニティ形成や人脈づくり、個人のみならず地域の課題発見と解決など、趣味や仕事にとどまらない波及効果も生み出す展開を目指しています」

(「くりやまものづくりDIY工房」のHPより)

目指しているところは素晴らしい。これを実現するための仕掛けとして、同サイトには、こんな具体例があがっている。

  • ものづくり未経験者・初心者でも参加できる体験メニュー、
  • 電子工作やプログラミングを通じて倫理的思考力を身に付けるワークショップ、
  • 関心の高い身近な課題や地域の資源・特性を活かしたプログラムの提供などを想定

中身をしっかり見てみないとなんともいえないが、ここに上がっているものを見る限りでは、
初心者にものづくりや電子工作/プログラミングの楽しさや「へー、こんなことも意外と簡単にできるんだ」という実感を持ってもらってその後の展開に期待しよう、というスタンスなのかなと思う。

でもこれだけだと、ビジネス路線で考えるとちょっと弱い。楽しい遊び場以上のものではなく、せいぜいビジネスとしてもハンドメイド作家さんが足しげく通い作品制作に打ち込むくらいの成果しか上がらない気がしてならない(すみません)。

それを避け、地域創成に寄与する事業展開にするには、「コワーキングスペース」のスキームを取り入れるのが近道じゃないかな。

1.ノマドワーカーが集まる場所

私含めフリーランスでふらふらしつつパソコン一つで仕事をする人間(いわゆる「ノマドワーカー」)は近年増加傾向にある。

都心部であれば、迷わずコワーキングスペースを活用する。

だが地方に行くと、そんなものはないため、やむなくカフェや喫茶店を利用することになる。電源がとれて、Wi-Fiが飛んでるということはノマドにとり割と重要。

一人集中して仕事に打ち込みたいときはよいのだが、せっかく地方をふらついてるのだから、地域住民、中でもビジネスパーソンとの交流がほしいときも多い。その点、喫茶店だと、敷居が高い。

だがコワーキングスペースであれば、たとえそれが異業種であろうと、自然と交流が生まれ、思わぬビジネスアイディアをいただくことも少なくない

2.外の視点が地元の常識を揺さぶり化学反応を引き起こす

外から来るよそ者はとても貴重だ。地元に長く住んでいると気づくのが難しい、地域の魅力を掘り起こしてくれるから。

地元の人にとっては、あたりまえに身近にあって価値などないと思い込んでいるものは多い。「そんなもん売れるの?」が、見せ方を変えるだけでバカ売れし、大きなビジネスになることはよくある。

地域住民だけが集まるクローズドな場にするのではなく、積極的に開かれた自由な環境づくりを意識するのが大事。

3.ベンチャー起業とのゆるい提携

外部の民間企業との業務提携。ここからはビジネスのノウハウを生で学べるし(学び合えるし)、共同プロジェクトが生まれやすい。

「栗山の○○を使ってこういうもの作ろうと思ってるんだけど、需要あるかなあ?」
「へー、それ、うちの取引先で似たようなもの探してた気がする」
「ほんとに?」
「ああ、ちょっと担当者に電話してみよっか」

こうした展開が生まれる可能性だってある。地元の人たちがどれだけ集まっても、すでに情報を持ってる外部の人間にはかなわない。

民間といっても、特にベンチャーとは親和性が高い。なぜなら彼らのメンタリティーは、新しいビジネスを常に模索することにあるし、その上、フットワークが軽いから。それがベンチャーたるゆえんでもある。

コワーキングスペースは地域活性化戦略で有用なコミュニティー形成に寄与する

1, 2で書いたいわゆる外部の人たちとの交流が生まれる場づくりができれば、相互にメリットのある刺激的な場になる。

ある程度、専門家集団が入ることで、プログラミング教室等の教育や栗山を訪れる観光客との交流というネタも生きてくる。

いろんな自治体の地方活性化事業を見てると、以下のどちらかに振れてるケースが多い。

  • すべて地元完結でがんばる路線
  • すべて外に丸投げ路線

前者の場合、モノも人材も情報も不足しているため、じきに疲弊してしまう。

後者の場合、経済的にはうまくいったとしても、地元住民はおいてけぼり感がはんぱなく、不満がつのりがち。

この両極端に振り切れず、内と外との有機的なつながりを重視し、しっかりバランスをとることが大事。そしてソフト面(人!)の充実にこそ予算を使って欲しいな、と声を大にして言いたい。

起業支援に関して、もう一言付け加えておくと、私が起業支援で必須だと思うのは、金融機関(地元信金)、不動産会社、コンサルタントチーム。それに商工会の協力と大学との連携があると鬼に金棒(このあたりの話はまた別の機会に書く)。

工房の取り組みがうまくいくと、そこに集まる人たちが必要なスキルを習得し、有益な情報と人脈を活用することで起業も容易になる。廃業寸前の地元の企業が見事な再生を遂げるかもしれない。

あれこれ考えると、コワーキングスペースという仕掛けは、地域活性化に関して割とよくできてるんじゃないかな、というのがさしあたりの結論。

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